普通の主婦が調べるブログ

障害のある子を適当に育てる日記

「可愛いがられる障害者」からの脱却

バニラ・エアが車椅子の障害者に対して、タラップを這って上がらせた、という事件。

朝日新聞が取り上げたことから大炎上となり、バニラ・エアは謝罪し、当該の奄美空港にはアシストストレッチャー(階段昇降機)が導入されることとなった。

 

とまあ、こんな事件だったんだけども、この這い上がった木島さんという方が、事前連絡をせず搭乗を要求していたということ、そして世界中を車椅子で旅しながらバリアフリーを訴えている人、ということが分かってから、状況は変わってきた。

「プロ障害者」「クレーマー」などと言われ、その行動が批判されている。

その件に対して、ハフィントンポストに寄稿したのが乙武さん。

www.huffingtonpost.jp

乙武さんの人柄とかプライベートとかにはあまり興味がないけれども、この投稿に対しては、同意せざるを得ない。

「障害者差別解消法」のことを知っている人はどのくらいいるんだろうか。

批判されてすぐにアシストタラップを導入できるんだから、今までは「できるけど、(お金かかるし面倒くさいし)やらない」だけだった。そして「嫌なら(障害者は)乗るな」という搭乗拒否に繋がった。

明らかに障害者差別解消法に違反している。

木島さんの行動はそれに対する「抗議行動」であり、「効果的なパフォーマンス」だ。

航空会社のルールは破ったが、法律には違反していない。むしろ法律(障害者差別解消法)に違反していたのはバニラ・エアの方だ。

「きちんと手順を踏んで、抗議文を送るなり、裁判を起こすなり……」とコメントをしている人もいたが、そんなことでバニラ・エアはアシストタラップを導入しただろうか。

抗議文なんて「ご意見ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます」って返信だけでおしまいだろうし、裁判をするには莫大な時間とお金を要する。

この木島さんは「階段を這って、それを朝日新聞にリークする」という行動だけで、結果的にアシストラップを導入させてしまった。

実に費用対効果が高い。

なぜ障害者は「ごめんなさい、でも、こうしてほしいな」とか「本当に申し訳ないけど、こうだったら嬉しいな」とか、下手下手に出なきゃならんのか。

「税金で食わせてもらってる」なんて話はお門違いだ。この国には障害者じゃなくても所得税を払っていない人はいっぱいいるし、よほどの大富豪でもない限り皆多少なり国や自治体のサービスを使っているんじゃないだろうか。それに、障害者だって消費税は支払っているし、障害者の世話をしている(例えば親とか)は普通に税金を納めている。

そもそも、憲法で人権は保障されているのだから、障害者が下に見られていいわけがない。

でも、多くの障害者は「申し訳ないな」と感じながら、または、理不尽だと分かっていても申し訳無さそうな顔をしながら生活している。

下手に出ないと、ちゃんとお世話をしてもらえなかったり、必要なサービスを受けることができないからだ。

 

「可愛い障害者」を演じなければ、誰も助けてくれない。

 

だから、自分よりも若い子から赤ちゃん口調で話されても、迷惑だって顔をされても、ニコニコしているしかない。そんなの悲しすぎる。

「オレは障害者様だぞ!どけどけ!死ね!」みたいな奴は言語道断だけど、ごく当たり前に、対等な立場として振る舞うことすら許されない現状がある。

だからこそ、この木島さんの行動は、画期的だったと思う。

賞賛されるような方法ではなかったかもしれないけれど、

「障害者だって、健常者と同じく頭を使って狡猾な手段に出ることもあるんだぜ」

というのを身をもって示してくれた。

狡猾とはいえ、誰も傷つけていないし、法律にも違反してない。

私には真似できないが、こういう人がいたっていいじゃない。それで世の中が良い方向に変わるなら。

騒ぎを起こすことはいずれは通用しなくなって、共感を得られなくなるかもしれない。

その時は、また別の方法を考えればいい。マーケティングってそういうことだろう。

鬼の首を取ったように「これだから障害者様は」とか「クレーマーなんて死ねばいい」とここぞとばかりに罵詈雑言を浴びせている人は、親を車椅子に殺されて、アシストタラップに自分の名誉をズタズタにされた経験でもあるんだろうか。

 

それにしてもバニラ・エアはホームページでしれっと

「ご利用ガイド お手伝いが必要なお客様」

というページで「奄美大島線はアシストストレッチャーあるから、事前に連絡してね」と書くだけで、この件についてinformationにも何も記載していなかった。

なんというか、そういう会社なんだな、と思った。