「『障がいをもつ子の育て方』がよくわかる本」(書籍)
初心者向けという評判を見て購入してみた。
「『障がいをもつ子の育て方』がよくわかる本」川岸恵子著(現代書林)
重度の障害を持って生まれた長男(23歳で死去)を持つ著者が、自身の経験を踏まえて障害者を育てる親に向けて書いた本。
いわゆる「正当な」障害児育児本だ。
お母さんは悪くないよ。この子は他の人と違う人生を歩むけど、人として生きるのに大切なことをたくさん教えてくれるのよ、抱きしめてあげて、という内容プラス、障害の分類や就労施設の種類が超簡単に書かれている。
「悩まないで!もう大丈夫だよ!」と帯に書いてあったり、
「障害を持つことイコール不幸ではありません」とか、
「すべてを受け入れることで喜びが生まれる」とか、
なんというかそこはかとなく漂う宗教臭。(宗教の本じゃないけど)
そもそも「お母さんの不安と疑問を解消」という副題が気に入らない。
父親の役目についてはチラッと書かれているが、「母親を包み込むのが、『障がいをもつ子』の父親の役目」なんて書かれている。
「一日中がんばっているお母さんをほめてあげてください」ですって。
ふざけんじゃねえ。
父親だって育児しろや。
こんなの、いかにも昭和の「障害者のいる可哀想な家庭」そのものじゃないか。
実際父親が一家の大黒柱として働いていて、子どもと触れ合う時間は母親に比べると少ないのものわかる。でも、ここまでごく当たり前のようにそれを受け入れて、母親と父親が育児において対等ではない、という扱いをナチュラルにしているのがもう受け入れられない。
「お母さん、がんばれ、がんばれ」
と口に出さずとも応援されている感がビシビシ伝わってくる。
「教育・福祉・療育に関わっている人も必読の書」と帯に書いてあるが、こういうのを支援する人たちも読んで、当たり前のように「障害児は母親が頑張って育てなきゃダメ」という感覚を刷り込んでいくんだろうな。
筆者は特定非営利活動法人を立ち上げて障害者のためにさまざまな福祉事業を行っているとても立派な人なんだが、「すべては子どもが中心で、母親はそれを全力でサポートすべし」という根本的な感覚が、私とは合わないなと感じた。
障害児の自立を考える前に、健常者である母親が「障害児を育てている」ということだけで自立できない、という現状をなんとかしなきゃいけない気がするんだけどな。