「相模原事件とヘイトクライム (岩波ブックレット) 」(書籍)
ブックレットというのを、実は初めて買った。
岩波ブックレットというのは、「時代のトピックを迅速に取り上げ、くわしく、わかりやすく、発信する」という目的で岩波書店が出している小冊子だ。
「相模原事件とヘイトクライム (岩波ブックレット) 」保坂展人著(岩波書店)
著者の保坂展人氏は世田谷区長。
中学時代から学生運動に参加していて、そのことが内申書に書かれて高校受験に失敗し、「内申書裁判」を起こしたことでも知られる。
なんというか、とにかく社会と戦い続ける政治家、というイメージがある。
相模原事件のことについて、事件の翌日にハフィントンポスト日本版に緊急寄稿して、それが話題となり、ブックレットにまとめて発売に至ったようだ。
Twitterのこの発言も、当時拡散された。
相模原市の「大量殺戮事件」のニュースを見ていて、「二次拡散」が心配になる。容疑者の衆議院議長にあてた「犯罪予告」の手紙の文面等を報道機関が紹介する時、なぜその主張が許されないのかを徹底的に伝える必要がある。自殺事件を大きく取り上げて、「社会的連鎖を呼ばない配慮」が参考になる。
— 保坂展人 (@hosakanobuto) 2016年7月26日
このブックレットは事件後まもなくまとめられたものなので、事件そのものに関する内容は少ない。
ただし、障害者を取り巻くヘイト思想については実にわかりやすく書かれており、非常に参考になった。
ナチスのT4作戦のことも、私はこの本を読んで知った。
内容の半分近くが藤井克徳さんのインタビューなのだが、この藤井さんの存在を知ったことも大きな収穫の1つ。
写真:藤井 克徳 | 日本障害者協議会より
藤井克徳さんプロフィール
1949年生まれ。青森県立盲学校高等部専攻科卒業。1976年都立小平養護学校(現、都立小平特別支援学校)教諭。1981年「共同作業所全国連絡会」(現、「きょうさんれん」)事務局長、1994年きょうさんれん常務理事、埼玉大学教育学部非常勤講師(兼職。2014年まで)、2012年内閣府・障害者政策委員会委員長代理(2014年まで)などを経て、現在、「日本障害フォーラム幹事会」議長、「NPO法人日本障害者協議会」代表、きょうさんれん専務理事などを務める。著書に、『見えないけれど 観えるもの』(やどかり出版、2010年)、『私たち抜きに私たちのことを決めないで―障害者権利条約の軌跡と本質』(やどかり出版、2014年)、『えほん障害者権利条約』(汐文社、2015年)などがある。
元々弱視で、40代後半から全盲状態という藤井さんだが、これまで障害者運動をリードしてきた福祉の世界では前から有名な人だそうだ。ドイツまで行ってT4作戦について調べたり、とてもアクティブな人だ。
藤井さんは福祉系論客(適当に作ったのでこの名称は変かな?)の中でも、その豊富な知識や、冷静で的確な発言から特に目立つ存在のようで、さまざまな媒体に登場する。他にも、福島智さん(全盲の東大教授)の名前もよく見かけるし、このブックレットにも登場している。
本書は藤井さん含めて福祉関係者の意見が色々と掲載されていて、優生思想の問題点や今後の課題についてもわかりやすく解説してあり、薄い本だが中身は読み応えがあった。
この本の他にも、藤井さんが寄稿している別の本を発見したので、次はそちらを読んでみようかな。