ブラックボックス展の痴漢問題
ネットで流れてきたニュースが気になった。
サザエbotの運営者「なかのひとよ」の個展、「ブラックボックス展」に訪れた客の女性たちが、ブラックボックス内で胸を触られたりキスをされたりといった痴漢行為に遭ったという事件。
てっきり「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のことかと思ってびっくりしたが、全然別物だ。
アートなの?これ。一体何を目的とした展示なのか、ホームページを見ても判然としない。
「体験した内容を口外してはいけない」とか、最初に誓約書を書かされる理由もよくわからない。ちなみに、ホームページは何を狙ってんだか、断続的に暗くなる仕様になっていてイラっとする。
すごく好意的に開催の意図を汲んでやるとしたら、「インターネットに颯爽と登場した、個人か複数の人間か、はたまた機械かもわからない謎の主催者による、謎の個展。何が起こるかもわからない。誰にも話せない。それこそ、匿名性をまとったインターネット社会を体現しているとはいえないだろうか。“よくわからない”ということは不安を掻き立てもするが、同時に“楽しい”という感情も生む。そんな実体のないインターネットを、ブラックボックスというアートで表現しました!」ということなんじゃないだろうか。(テキトー)
そんな大層なもんでもなくて、「twitterで有名になったオレかっけー!見て見て!(でも名前も顔も公表しねーよ)」ってだけのものなのかもしれない。
いずれにせよ、この展示が「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」をパクって、に影響されているのは間違いないと思う。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というのは、ドイツの哲学者が1988年に始めた、暗闇の空間で、聴覚や触覚など、視覚以外の感覚を使って体験するエンターテインメント形式のワークショップだ。世界39か国で展開されており、志村真介氏が日本法人を立ち上げて運営している、“由緒正しい“ワークショップだ。
公式ホームページはこちら↓
視覚障害者の気持ちになって体験できるということだけでなく、企業なんかがリーダーシップやグループの協調性を高めるために研修として利用したりしているそうだ。
「障害者の気持ちを理解しましょう」というだけでなく、それ以上のものを取り込んで経営として成り立たせていることに、とても興味がある。一度行ってみたいとずっと思っている。
成り立ちも中身も目的もぜんぜん違う「ブラックボックス展」と「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。ダイアログ・イン・ザ・ダークが人々の中にあるあらゆる境界を取り除こうという理念があるのに対して、ブラックボックス展は「選ばれた人のみが体験できる…」と謳っている。パクってるくせに図々しい。
まったく違う両者のイベントだが、「暗闇の中で、行動する」という点だけは共通している。
でも、ダイアログ・イン・ザ・ダークでは今のところ痴漢問題は起きていないようだ。
ダイアログ・イン・ザ・ダークはグループを組むのが基本で、企業研修などでは貸し切りになったりする。行ったら誰でも入れるわけではなく、予約必須だ。
料金もダイアログ・イン・ザ・ダークが5000円で、ブラックボックス展が1000円だ。
安かろう悪かろうで変な奴が来ることも予測できる。
ブラックボックス展に行った若者の多くは、「twitterで情報が流れてきて面白そうだと思った」のが理由だそうだから、そういうことならダイアログ・イン・ザ・ダークに行った方が良いと思う。
ところで、この問題で一番気になったこと。
ブラックボックス展という暗闇の中で女性が痴漢にあったということは、視覚障害者の女性だって同じ問題を抱えているんじゃないか?ということ。
2012年にNHKでこの問題について取り上げていた。
3人に1人が性的被害!?
どこの団体が行った調査かわからなかったので、今度もう少し詳しく調べてみようと思う。
京都府の障害者支援課では、こんな報告書を公開していた。↓
http://www.pref.kyoto.jp/shogaishien/documents/1347449800400.pdf
(抜粋)
・上司と二人きりになると後ろから抱きつかれて胸を触ったり、下着に触られた事がある。(視覚障害)
・一般中学校の担任が女性だったから性にまつわる相談をしたのに、対応に難 聴学級の男性教諭が出てきた。保健室の先生にも話を真剣にきいてもらえなか った。(聴覚障害)
一つ一つ、読むだけで腸が煮えくり返る。許せない。本当に酷い。
上記の報告書には、視覚障害者だけでなく、肢体不自由や精神障害者の女性の体験も書かれていた。
我が子だって決して他人事ではない。
体が不自由な上に、知的障害もある我が子は、何かされてもそれを伝える術を持たない。怖くて、辛くて、恥ずかしくて、嫌だ、やめて!と思っても、それを相手に言うことも、私に伝えることもできないんじゃないか。
そう思うだけで、涙が出てくるくらいツライ。
こうした問題は以前から「もう少し大きくなったら対策しないとな」と思っていたので、色んなことを調べて話を聞いていこうと思う。
余談だが、私の子に障害があると知ったある知人が、「知的障害者の女性はレイプに遭いやすいから、気をつけてね」と伝えてきたことがある。
女の子を持った親なら誰でも心配するであろうことを、わざわざ「障害児だから」伝えて「あげた」んだろう。
彼女は「いいことをしている」と信じる自分自身の中に差別する心があることに、まだ気づいていない。